俺と音楽CD. Studio Nocturne「FARAWAY」
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前回から約1年半ぶりの間が空いてしまった。このペースでは死ぬまでに何枚紹介できるというのだ。それでも地道に続けたいと思う。
ある季節に来ると、ある曲を聴きたくなる時がある。
例えば冬ならばKanonの曲、夏だったらAIRの曲といった感じに。データを取ったわけではないが、だいたい各自の若かった頃、青春時代の頃の音楽というのは好むと好まざるとに関わらず、己というものに染み付いているような感覚があるのではなかろうか。
そういう意味でこのアルバムというのは、それ自体に物凄く特別な思い入れがあるわけではないものの、手元に置いておきたく、今現在も所有し続けている作品である。
ジャケット裏面を見ると、発売時期は2001年8月12日。まぁ、今から18年前の夏コミ作品だろう。当時の俺は17歳頃で、AIRという作品の人気は知っていたものの、バイトもしていない高校生だったのでお金は無く、購入できなかった頃だ。当然、サントラも買うお金は無い。
そんな状況だった頃の同人音楽。オリジナルのサントラは買えないが、当時同人音楽CDであれば大抵のものは¥1,000とか¥1,500くらいの範囲であり、一般的に流通しているアルバム1枚¥3,000とかを考えれば購入しやすい価格だった。収録曲数を考えればお得だった。同人である以上、カバーというかアレンジの類であるものの、曲を聴く事ができるという意味で、お金のない自分にとってはオリジナル曲への入り口として重宝した記憶がある。
初めて聴いた時の印象は、いずれの曲もとても切なさを感じるもので、ジャケットイラストも相まってある種「夏の終り」というイメージだった。そのイメージ自体は今聴いてもそれほど変化していない。
今、アルバムを聴き直しながらこの文章を書いているのだが、7曲目の「夏影」という曲が特に良い。後年になってオリジナルを聴く機会があったけれど、オリジナルはオリジナルだけあって素晴らしいが、この同人版のアレンジもとても良いのだ。なにより曲が終盤に差し掛かる頃にひぐらしの鳴き声が入ってくるのが演出としてグッと来る。全15曲中の真ん中である7曲目なのも演出面で高評価。
全体的にはしっとり系だが、明るくノリの良い曲は14曲目「跳ね水」くらいで、俺のイメージ的には映画のスタッフロールといった感覚。もうすぐ終わるんだなという予感を想起させる。そしてそのまま15曲目「回想録」での綺麗な終わり方。
アルバム全体を通して世界観が統一されていて、プロデュースした人物のセンスと俺のフィーリングがとてもマッチしているのがこの作品を推薦する理由だろう。多くの同人音楽CDを手に取ってきたわけじゃないが、所有している同人音楽作品の中から選ぶとしたら外せない作品だと断言できる。
探せば中古でCDの入手は可能だし、YouTubeでアルバム1枚丸ごとアップされている。興味が湧いた人には是非とも聴いて欲しいのだが、おそらく無許可でのアルバム丸ごとアップロードではないかという疑惑が個人的に気に入らない面もあり、紹介するのは正直複雑。しかし新品購入はまず不可能だろうし、聴かれないのはそれはそれで悔しく、紹介するからにはむしろ聴いて欲しい。可能であれば静かな環境で聴いてもらいたい。
Studio Nocturne「FARAWAY」
1.野道
2.夢語り
3.虹
4.水たまり
5.川
6.夜想
7.夏影
8.蝉衣
9.縁
10.此処
11.月童
12.双星
13.ふたり
14.跳ね水
15.回想録