Morning, Noon & Night

随筆みたいなもの。言えない事もあるけれど、出来うる限り人生オープンで生きていたい。

アナログとかデジタルとか最近思うところ

 行きつけのオーディオ屋でベテランオーディオマニア客のエピソードを聞くことがたまにあるんだけれど、オーディオという世界への入口付近程度にいるような俺程度でも常軌を逸しているようなエピソードばかりなんだよね。

 エピソードの一つに、未だにレコードやテープメディアを信奉しているというのがあって、それは拘りという意味で凄く尊敬するんだけど、あまりにデジタルを下に見ている人の話は、アナログに憧れはしても拘りがあまり無い俺にはピンとこない。

 現在34歳の俺は世代的にアナログからデジタルへの過渡期を経験した人間だ。レコードは確かにあったけれど、物心がつく頃には既にCDのほうがメインになっていた。カセットテープも使ったし、ポータブルなCDプレーヤーやMDプレーヤーも使った。カセットデッキでも再生可能なMP3プレーヤーも使った。

 アナログにしろデジタルにしろ、結局は聴けば違いが分かるのだけれど、じゃあ聴かずに語るとどうなるかってぇと、結局の所は「デジタルはアナログの波形を再現できない」みたいなところに行き着く印象がある。そこは俺も否定はしないが、なんかそれって最大公約数的なザックリした感じも受けるんだよね。間違いじゃないけれど、それ「だけ」が正解とは思えないのだ。

 コンシューマ向けのオーディオではデジタルは頑張ってきたと思う。それはCDから開始してDVD-AudioSACDが出てきた。CDを超える音質としてハイレゾという定義も出た。ハイレゾにしたって96kHz/24bitのPCMや2.8MHzのDSDが出回り、今は768kHz/32bit PCMだの22.4MHz DSDが出てきた。アナログ派がよく言う「デジタルは波形がギザギザ」という問題に対してデジタルはひたすらデータ量を増やすことで、アナログとの距離を縮めようとしているのは間違いない。いくら波形がギザギザでも、人間が判別できないレベルにまで持っていく事ができるならば、判別できない人にとってそれはもはや同等のものであると言えるでしょう。

 そんな中でCDをCDのままでハイレゾを実現しようという面白い試みのMQA-CDのような規格も出てきた。デジタルはどうにかして進化しようとしてる。かつてのmp3のようなファイルサイズ重視で音質を犠牲にした不可逆圧縮から、音質と圧縮率のバランスを追求したAACFLACのような可逆圧縮にしたりと試行錯誤をしてきた。

 それに対してアナログ派はどうなのか。未だに古い規格のレコードとテープメディアじゃないかと。もっと良いアナログ記録媒体は無いのか、と。言ってしまえば進化はともかくどこまで進歩してんの? と。

 アンプにしても、真空管からトランジスタからICへと進化し続けている(音の傾向については主題ではないので割愛)が、真空管真空管から進化しているのか? と、問いたくもなる。真空管以上のアナログアンプは未来永劫出てこないのか?

 変わらない事に意味があるというのならば、「そうか」としか言いようがない。昨日と同じ今日、今日と同じ明日が、少なくとも自分が生きている間だけでもずっと続くのであれば、俺には変化が乏しくて面白くないものにしか見えないが。

 現段階の俺の結論としては、「アナログとデジタルは違うものだ」という、優劣という単純な二元論で分けられない至極当たり前の話に帰結するだけだ。比較できないものを比較しようとする時点で終わらない。肉と魚はどちらが美味いか、なんて話をしても意味がないのと同じ。どちらも煮たり焼いたりして食べるが、何をどう主張したところで肉派と魚派に分かれるだけである。例え人数の多い少ないで割合を計っても、それは優劣を示す根拠にはならない。金額が高価なものが優れているならばピュアオーディオが勝つが、数多く市場に出回ったものが優れいてるならばコンシューマ向けのほうが勝ちである。

 個々の機能や特徴を一つずつ比較すれば、そりゃそれぞれにおいては優劣がつくかもしれんが、全体として見たらやはり一概にどうとは断言はできない。優劣を決めようと議論すること自体が無駄なのだ。好きな方を選んで、自分や同好の士で追求していくしかない。